|大会長挨拶

 

 第17回日本口腔検査学会学術大会

 大会長 平野 浩彦

 東京都健康長寿医療センター

 病 院 歯科口腔外科 部長

 研究所 自立促進と精神保健研究チーム 研究部長

 この度、第17回日本口腔検査学会学術大会の大会長を拝命しました。このような機会を頂戴しました日本口腔検査学会、ならびに本学会会員の皆様に感謝申し上げます。今回は、私の母校である日本大学松戸歯学部で学術大会を開催させて頂きます。松戸歯学部では創設50周年記念事業として、新校舎「50周年記念棟」を建築し、2024年4月1日から運用を開始しております。本学術大会は300名が収容できる「50周年記念講堂」を中心に学術大会企画を運営致します。

 今回の大会テーマを「臨床検査で知る「くち」の物語」と掲げました。検査とは「ある基準をもとに、異状の有無、適不適などを調べること」で、ヒトを対象とした臨床検査は「身体状態を知る」、「異常の原因(疾患等の有無)を調べる」、「治療計画立案」、「治療効果の確認」等を目的として広く実施されています。「口腔検査」に目を転じると臨床検査としての目的をより一層活用する場面が増えている印象があります。その一端を、近年の診療報酬改定の動向より見ることが出来ます。報酬改定の重点的対応が求められる基本方針分野の一つとして「口腔機能低下への対応」が掲げられており、2018年度改定では、口腔機能発達不全症、口腔機能低下症に対する口腔機能管理が保険導入されました。さらに2024年度改定では「かかりつけ歯科医機能の評価」として、口腔機能管理に関する実績要検討が評価されることになりました。これは、乳幼児期、青年期、壮年期、さらに高齢期における、従来のう蝕、歯周病の重症化予防に加え、口腔機能の獲得・維持に資する口腔機能管理実施が生涯を通じた口腔の健康の維持に寄与すると言えます。

 一連の改定は、歯科医療機関を受診する患者像の変化や生活環境の多様化などにより、歯科疾患の疾病構造および治療内容が変化していることがその背景にあります。従来の歯科治療だけではなく、全身的な疾患や患者の生活状況なども踏まえ患者個々の状態に応じた口腔機能の獲得・維持・回復をめざす「治療・管理・連携型」の歯科治療を進めることが求められています。一連の歯科治療を適切に提供するためには、ライフステージにおける患者個々の「物語」を読み取ることが必要と考えます。本学術大会が「臨床検査で知る「くち」の物語」を読み取る機会になれば幸いです。

 たくさんの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。